症例
2025/05/01
皮膚科脱毛症のポメラニアン
- 犬種・猫種 ポメラニアン
- 年齢 3歳
- 症状
- #毛が抜けている
- #脱毛
- #痒い

症状および経過
幼少期には問題はなかったものの、2-3歳頃から徐々に毛が抜けていった。現在では、顔周りや手足には毛が残るが、体、お尻、太ももの毛は抜け落ち、地肌が見えている。毛も以前と比べるとパサついていて固くなっている。
食事やサプリを何種類か試したが、あまり効果が出なかったため相談のために受診。
診断
毛周期停止(Hair cycle alopecia)(アロペシアX)
治療経過
発症年齢、犬種、皮膚科学的検査より、「毛周期停止」と臨床診断。治療法は多岐に渡るため、飼い主様と一緒に治療法を相談。サプリ、スキンケア、食餌療法を開始し、悪化傾向は認められず、徐々に育毛が見られている。
病気について
毛周期停止症(アロペシアX)とは、毛の生え変わるサイクルが止まることで、毛が抜けてしまう脱毛症です。発症要因は判明していませんが、ポメラニアンを代表に、特定犬種での発生が知られています。
命に関わる問題は起こりませんが、脱毛や毛が硬くなってしまうことがあるため、美容的な観点から、以下の治療法を検討します。
- 薬物療法
発毛には体内に存在するホルモンが関連するため、ホルモン量を調節することが効果的に働く可能性があります。一方、副作用には注意が必要があり、定期的なホルモン値測定が推奨されます。
- サプリメント
発毛効果が認められているサプリメントはいくつも存在します。明確なメカニズムが判明していないものもありますが、副作用が強く現れるケースは少ないため、ご高齢のワンちゃんにも始めやすい治療法です。
- 去勢/避妊手術
毛周期停止の発症にはホルモンの関連が示唆されているため、性ホルモンの制御を目的として去勢/避妊手術を行うと発毛が見られるケースがあります。
- 食餌療法
補助治療という形になりますが、タンパク質の多いフードを食べることにより発毛の手助けになる可能性があります。
- スキンケア
多くの症例で毛が固くなってしまう変化が見られます。また脱毛した皮膚ではバリア機能低下により膿皮症などの別問題が発症することがあります。
スキンケアとしては保湿や、血流改善を目的とした炭酸泉などが推奨されます。
- マイクロニードル
およそ3mm程の針を皮膚に刺し、あえて炎症を起こすことで細胞を活性化させる治療法です。上記に挙げた治療法の中で最も発毛を起こさせる可能性の高い治療法ですが、痛みを伴う治療法であるため、全身麻酔/鎮痛治療が必要となります。
毛周期停止に関しては、皮膚科診療の発展により、これだけ多くの治療法が報告されています。
飼い主様、ワンちゃんの状態と併せたオーダーメイド治療が大事になりますので、脱毛でお困りの方はぜひご相談ください!
ちなみにこの子は治療により発毛が見られています!
継続治療は必要ですので、今後も様子を見る予定です。

この記事を書いた執筆者
動物病院西谷院長 野呂嵩大
略歴
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後、日本動物高度医療センターの泌尿器・消化器科に勤務。その後、横浜・横須賀の動物病院での経験を経て、サーカス動物病院皮膚科研修医として研鑽を積む。2023年に日本獣医泌尿器学会泌尿器認定医を取得し、現在はサーカス動物病院 総合診療科・皮膚専門診療および日本動物高度医療センター 泌尿器・消化器科にて診療を行う。2025年3月から動物病院西谷の院長に就任。
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