症例
2025/07/05
外科 消化器科ネコの消化器型高グレードリンパ腫
- 犬種・猫種 雑種猫
- 年齢 14歳
- 症状
- #健康診断
- #食欲低下

症状および経過
14歳の雑種猫、食欲低下を主訴に受診された。腹部の触診にて、腫瘤状病変(いわゆる出来物)を触知。腹腔内に腫瘍がある可能性があったため、腹部超音波検査を実施したところ、小腸に腫瘍性疾患を疑う所見が得られた。細胞診検査を行ったところ、「高グレードリンパ腫」と診断された。
治療法
外科手術、抗がん剤治療、ステロイド薬を主体とした対症療法
治療経過
現在はステロイド剤を中心に対症療法を実施している。徐々に食欲は改善傾向。今後の外科治療や抗がん剤治療に向けて体調を整えながら、治療法を相談中。
病気について
消化器型高グレードリンパ腫とは、消化管に発生した悪性度の高いリンパ腫のことを指します。
とても重大な疾患ですが、高齢の犬猫での発症は珍しくはありません。
この病気に対しては大きく分けて3つの治療法があります。
①外科治療
腫瘤化している部分の消化管を切除する、消化管の端端吻合という術式です。
腫瘤化している部分と、その周囲の正常と思われる部分をまとめて切除し、切除した腸同士を繋ぎ合わせます。繋ぎ合わせた腸が離開する可能性もありますが、根治を狙う場合はとても重要な治療になります。
②抗がん剤治療
抗がん剤治療のやり方(プロトコルと言います)には様々な種類がありますが、基本的には複数の抗がん剤を組み合わせて、治療を行うことが一般的です。
治療期間は約半年程度になります。抗がん剤には副作用がありますので、定期的な血液検査や、場合によっては超音波検査などを組み合わせて安全に行えるかどうかを判断します。
③対症療法
現状、①②以外での有効な治療法は少なく、①②を行わない場合にはステロイド剤を中心とした対症療法を行います。治療効果としては最も少ない方法になりますが、逆に治療によるリスクは少ない方法です。
本症例は、現在対症療法を行い、今後の外科治療や抗がん剤治療に向けて体調を整えている段階です。
写真は、別の症例ですが、手術をして腫瘤化した部分を取り除いたものです。

高齢のワンちゃん/ネコちゃんの場合、こういった腫瘍性疾患が認められるケースも少なくありません。
体調悪化の際には、ぜひ検査をご検討下さい。
また、定期的な健康診断が、病気の早期発見/早期診断に繋がりますので、ぜひご検討下さい。
この記事を書いた執筆者
動物病院西谷院長 野呂嵩大
略歴
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後、日本動物高度医療センターの泌尿器・消化器科に勤務。その後、横浜・横須賀の動物病院での経験を経て、サーカス動物病院皮膚科研修医として研鑽を積む。2023年に日本獣医泌尿器学会泌尿器認定医を取得し、現在はサーカス動物病院 総合診療科・皮膚専門診療および日本動物高度医療センター 泌尿器・消化器科にて診療を行う。2025年3月から動物病院西谷の院長に就任。
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