症例
2025/06/06
基本診療科 外科子宮蓄膿症の柴犬
- 犬種・猫種 柴
- 年齢 11歳
- 症状
- #健康診断
- #食欲低下
- #嘔吐
- #発熱

症状および経過
数日前から食欲低下、飲水量の増加、陰部から液体が出ているとのことで来院。血液検査やレントゲン検査、腹部超音波検査より、子宮蓄膿症が第一に疑われ、緊急的な手術を計画した。
治療法
外科手術による卵巣子宮摘出
治療経過
飼い主様とご相談の上、来院当日に緊急手術を実施。入院翌日より食事を摂るようになり、徐々に元気を取り戻していった。5日間の入院を経て退院。退院後の検診では、いつも通りの元気を取り戻していた。
病気について
「子宮蓄膿症」とは、子宮内に膿が溜まることで、症状を起こす病気で、中年齢以上の未避妊メスに起こります。好発種は特にありませんが、特に犬における発生が多く知られています。猫でも稀に発生します。
症状は元気食欲低下や発熱、飲水量増加、陰部からの排膿が見られます。陰部からの排膿以外は、症状だけでは診断に繋がらない、いわゆる「非特異的症状」です。
本症例では陰部からの排膿があったため、飼い主様もすぐに異常に気付くことが出来ましたが、排膿がないパターンもあり、発見が遅れることがあります。
検査としては、血液検査やレントゲン検査、腹部超音波検査、尿検査などを必要に応じて行います。腹部超音波検査にて子宮内に液体が貯留していることや、その他の検査結果と併せて診断します。

治療としては手術による卵巣子宮摘出が勧められます。
抗生剤やホルモン剤による治療法もありますが、原因を除去しない限りは症状がぶり返す可能性があります。
中年齢以上での発症が多く、麻酔をかけることに一定のリスクはありますが、「子宮蓄膿症」は命に関わる可能性のある病気です。
本症例も飼い主様と良くご相談し、当日に手術をすることとなりました。
結果的に、「以前と同じくらいか、それ以上に元気になった、手術をして良かった!」とのお言葉を頂くことが出来ました。
病気の予防について
この病気は避妊をすることで発症を予防することが出来ます。
もちろん避妊手術については、飼い主様それぞれ、お考えがあるかと思います。
- 可愛い子供を産んでほしい
- 母親になってほしい
- 子供のうちに体にメスを入れることがかわいそう…
上記は診察の中でお聞きしたご意見です。
どれも素敵な考え方だと思いますので、そのお考えが達せられるようお手伝いさせて頂きたいと思います。
ただ、「病気を予防する」という点では、
最初のヒートが始まる前に避妊手術を行う
ことが最も重要です。
この方法により、乳腺腫瘍の発生率を低下させ、未避妊での発症が多い皮膚病や血液疾患、腫瘍性疾患、今回お話した子宮蓄膿症の発生率を下げることが可能です。
健康に生活するためには、「未病」を意識することもとても重要です。
避妊手術はご家族の一生に関わることですので、お悩みがある時は、お気軽にご相談ください。
皆さまにとって、最良の選択が出せるようお手伝いさせて頂きます。
予防手術(避妊、去勢)についてお悩みがある方は、お気軽に当院までご連絡ください!
この記事を書いた執筆者
動物病院西谷院長 野呂嵩大
略歴
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後、日本動物高度医療センターの泌尿器・消化器科に勤務。その後、横浜・横須賀の動物病院での経験を経て、サーカス動物病院皮膚科研修医として研鑽を積む。2023年に日本獣医泌尿器学会泌尿器認定医を取得し、現在はサーカス動物病院 総合診療科・皮膚専門診療および日本動物高度医療センター 泌尿器・消化器科にて診療を行う。2025年3月から動物病院西谷の院長に就任。
CASE
関連症状を見る